【外壁塗装】安売りせずに粗利率を上げる「3プライス戦法」と営業設計
価格を下げて受注する営業から、「売る商品・比率・ストーリー」を設計して利益を残す営業へ
【本コラムで分かること】
- 塗装会社で粗利率が下がりやすい背景と、値下げ以外の改善ポイント
- 粗利率改善の起点になる「何を売るか」という商品設計の考え方
- 複数商品を使い分ける「3プライス戦法」の考え方
- 商品ごとに粗利率と販売比率を設計する方法
- 売りたい商品へ自然に導く営業ストーリーの作り方
- 「初期価格」ではなく「長期のメンテナンスコスト」でコスパを伝える方法
- 競合状況を踏まえて営業戦略を自社仕様に調整するポイント
粗利率を上げたいなら、最初に「何を・何%売るか」を決める
「最近、以前より粗利率が下がってきた」
「相見積もりになると、つい価格を下げてしまう」
「受注は取れているのに、思ったほど利益が残らない」
塗装・リフォーム会社では、集客数が落ちてくると受注率を優先するあまり、価格を下げて契約を取りにいく場面が増えやすくなります。
しかし、粗利率を改善するために必要なのは、単純な値上げではありません。
重要なのは、「何を売るのか」「商品ごとにどれだけ粗利を確保するのか」「どの商品を何%売るのか」「なぜその商品を選ぶべきなのか」を営業前に設計しておくことです。
動画では、この考え方を複数の商品・価格帯を使い分ける「3プライス戦法」として解説しています。
本コラムでは、外壁塗装会社・リフォーム会社が価格競争に巻き込まれず、粗利を確保しながら提案力を高めるための商品設計と営業ストーリーの作り方を、実践ステップに分けて解説します。
▼塗装会社の粗利率を上げる「3プライス戦法」の解説動画はこちら▼
商品ごとの粗利設計、販売比率、長期メンテナンスコストを使った提案方法まで解説しています
1. 塗装会社の粗利率が下がるとき、現場では何が起きているのか
粗利率が下がっている会社では、必ずしも原価だけが問題になっているわけではありません。
動画では、集客が減っていることで「多少粗利を下げても受注率を上げたい」と考える会社が増え、その結果として価格競争に巻き込まれているケースがあると説明されています。
問い合わせが少なくなるほど、1件の商談を失いたくないという心理が強くなります。
すると、営業現場では次のようなことが起こりやすくなります。
・見積もり提出後にすぐ値引きをする
・価格が安い商品に提案が偏る
・競合より高い理由を説明できない
・営業担当者ごとにおすすめ商品がバラバラになる
・受注率は維持できても、会社全体の粗利率が落ちる
だからこそ、粗利率改善では「もっと高く売れ」と営業担当者へ指示するだけでは不十分です。
経営側が先に、売る商品と価格、粗利率、販売比率、提案の流れまで設計しておく必要があります。

値下げ受注の悪循環イメージ図
2. 粗利率改善のスタートは「何を売るか」を決めること
粗利率を上げるために、最初に決めるべきなのは価格ではありません。
まず「自社は、どの商品を主力として売りたいのか」を決めることです。
外壁塗装であれば、例えば次のように複数の商品カテゴリーがあります。
- シリコン
- ラジカル
- フッ素
- 無機
- 多彩仕上げ
ここで重要なのは、商品をただ並べることではありません。
「価格が安い順に説明して、お客様に選んでもらう」だけでは、販売構成は営業担当者やお客様任せになります。
粗利率を経営指標として改善するのであれば、自社としてどの商品を中心に販売したいのか、その商品をなぜ勧めるのかまで決めておく必要があります。
例えば、ラジカルを主力にしたい会社であれば、ラジカルへ着地する比較軸や説明順序が必要です。無機を主力にしたい会社であれば、無機を選ぶ合理性が伝わる提案ストーリーが必要になります。
つまり、商品表を作るだけではなく、「商品設計」と「営業設計」をセットで考えることが重要です。
3. 「3プライス戦法」は、価格表ではなく販売設計である
3プライス戦法というと、「安い・普通・高い」の3つの見積もりを出す方法だと思われがちです。
しかし、今回の動画で重要なのは、単に3価格を見せることではありません。
複数の商品を用意しながら、「どの商品でどれだけ利益を残し、どの商品を中心に売るのか」をあらかじめ設計することがポイントです。
例えば、価格重視のお客様には入口商品を用意しつつ、会社としては中位・上位の商品へ自然に比較検討してもらう流れを作ります。
このとき、すべての商品で同じ粗利率を設定する必要はありません。
動画内では一例として、シリコン30%、フッ素35%、無機40%、多彩40%というように、商品カテゴリーによって粗利率を変える考え方を紹介しています。
重要なのは数字そのものをそのまま真似することではなく、商品ごとの役割に応じて粗利設計を変えるという発想です。

3プライス戦法
4. 商品ごとに粗利率を変えると、営業の役割が明確になる
低価格商品には低価格商品、高付加価値商品には高付加価値商品の役割があります。
例えば、価格重視のお客様まで無理に高額商品へ誘導すると、成約率を落とす可能性があります。
一方で、すべてのお客様へ低価格商品を勧めてしまえば、受注件数が取れていても会社全体の粗利額は伸びません。
そこで必要になるのが、商品ごとの役割を決めることです。
入口商品
価格への不安が強いお客様でも比較検討しやすくする商品。
主力商品
会社として最も販売比率を高めたい商品。価格・耐久性・粗利のバランスを取りやすい商品。
上位商品
長期耐久や意匠性など、明確な付加価値を求めるお客様へ提案する商品。
この役割が整理されていれば、営業担当者も「どれを売ればいいのか」が分かります。
さらに、商品ごとの粗利率が経営側で設計されていれば、現場任せの値引きも減らしやすくなります。
5. 全体の粗利率を上げるには「販売比率」まで決める
商品ごとの粗利率を決めても、それだけでは会社全体の粗利率は変わりません。
高粗利の商品を用意していても、実際にほとんど売れていなければ意味がないからです。
そこで必要になるのが、販売比率の設計です。
動画では、商品別の販売比率を事前に決める例として、50%・30%・20%という考え方を示しています。
ここで大切なのは、50・30・20という数字を固定ルールにすることではありません。
「主力商品を全体の何%売るのか」「次に伸ばしたい商品を何%売るのか」「価格重視のお客様向け商品を何%残すのか」を経営側で明確にすることです。
販売比率が決まると、営業会議でも「今月は受注件数が何件だったか」だけでなく、次のような確認ができるようになります。
- 主力商品の販売比率は目標に届いているか
- 低価格商品に偏っていないか
- 上位商品の提案数は十分か
- 営業担当者ごとに商品構成が偏っていないか
- 商品構成の変化によって全体粗利率がどう動いたか
これにより、粗利率改善を「営業担当者の感覚」ではなく、数字で管理しやすくなります。

販売攻勢と粗利率
6. 売りたい商品が決まったら「売るためのストーリー」を作る
主力商品を決めても、「この商品がおすすめです」と言うだけでは販売比率は上がりません。
お客様がその商品を選ぶ理由を理解できるように、比較の順番と判断基準を設計する必要があります。
動画では、ラジカルを売りたいならラジカルを売るためのストーリー、無機を売りたいなら無機を売るためのストーリーが必要だと説明されています。
営業ストーリーを作る際は、次の順番で考えると整理しやすくなります。
① お客様が重視していることを確認する
初期費用、耐久性、見た目、将来のメンテナンス回数など、何を優先したいのかを把握します。
② 比較基準を示す
単純な見積金額だけでなく、耐久年数、将来の塗り替え回数、付加価値など比較軸を増やします。
③ 各商品の違いを整理する
「安い・高い」ではなく、何が違うから価格差が生まれるのかを説明します。
④ お客様の希望に合う商品へ着地する
最初から押し売りするのではなく、比較した結果として主力商品が合理的な選択になる流れを作ります。
このストーリーが統一されていれば、営業担当者による提案品質のばらつきも抑えやすくなります。
7. 「コスパが良い」は、工事価格ではなく長期コストで伝える
営業現場で特に難しいのが、「コスパ重視」のお客様への提案です。
初期費用だけを見れば、安い商品が最もコスパよく見えることがあります。
しかし、塗装は一度の工事費だけでなく、将来何回メンテナンスが必要になるかによって、長期的な支出が変わります。
そこで動画では、「工事価格」ではなく「メンテナンスコスト」で比較するという営業ストーリーを紹介しています。
- シリコン:約10年
- フッ素:約20年
- 無機:約30年
※上記は動画内で営業ストーリーを説明するために示された概算例です。実際の耐用年数は塗料の商品仕様、下地、施工条件、立地環境などによって異なるため、各メーカーの仕様・自社の施工基準に基づいて説明してください。
重要なのは、「この塗料は高いです」で終わらせないことです。
例えば30年間の住まいの維持を考えるなら、低耐久の商品を複数回施工する場合と、高耐久の商品を少ない回数で施工する場合の総額を比較するという見せ方ができます。
そうすることで、お客様の判断軸を「今回いくら払うか」から「長期でいくらかかるか」へ変えられます。

外壁塗装の長期コスト比較
8. 高単価商品を売るときほど「価格差の理由」を明確にする
上位商品を売りたいからといって、単純に「長持ちするのでおすすめです」と説明するだけでは弱い場合があります。
お客様から見れば、目の前にあるのは数十万円の価格差だからです。
そこで営業では、価格差を次のような要素に分解して伝える必要があります。
- 期待できる耐久性の違い
- 将来の塗り替え回数の違い
- 塗料・仕様そのものの違い
- 意匠性や仕上がりの違い
- 保証やアフターフォローの違い
- お客様が何年その家に住む予定なのか
つまり、上位商品を売る営業とは、高い商品を押し込むことではありません。
お客様が長期的な価値まで理解したうえで、自分に合った商品を選べる状態を作ることです。
9. 同じ「無機塗料」でも、競合と同じ提案になるとは限らない
営業戦略を設計するときは、競合状況も無視できません。
無機塗料の販売比率を上げる、ラジカルの販売比率を上げるといった施策は、すでに多くの会社が行っている可能性があります。
さらに、同じ「無機」というカテゴリーでも、商品によって耐久性や仕様が異なるため、競合と同じ商品名を使っているからといって、同じ提案になるわけではありません。
そのため、自社の3プライス戦法を作るときは、次の点を確認する必要があります。
- 競合がどの商品を主力にしているか
- 競合がどの価格帯で提案しているか
- 競合が何を「コスパ」として説明しているか
- 競合が耐久性をどのように比較しているか
- 自社の商品・仕様で本当に差別化できる部分はどこか
粗利率改善は、単純な商品入れ替えではなく、自社の商品力・競合・顧客層を踏まえたオーダーメイドの営業設計が必要です。
10. 3プライス戦法を営業現場へ落とし込む5ステップ
ここまでの内容を、実際の営業改善へ落とし込む手順に整理します。
STEP1 商品ラインナップを整理する
シリコン、ラジカル、フッ素、無機、多彩など、自社で提案する商品を整理します。
STEP2 主力商品を決める
「一番売りたい商品」を明確にし、その理由を経営・営業で共有します。
STEP3 商品別の粗利率と販売比率を設計する
入口・主力・上位商品の役割を決め、会社全体でどの販売構成を目指すか数値化します。
STEP4 売るための営業ストーリーを作る
価格、耐久性、メンテナンス回数、総コストなど、比較の順番を営業トークへ落とし込みます。
STEP5 毎月、販売比率と粗利率を振り返る
営業担当者ごとの販売構成を確認し、低価格商品への偏りや上位商品の提案不足を改善します。
この5ステップで重要なのは、営業担当者へ「もっと高い商品を売ろう」とだけ伝えないことです。
売れる仕組みを先に作り、その仕組みに沿って営業できる状態にすることが、粗利率改善を継続させるポイントです。

粗利率を高める営業ロードマップ
11. 粗利率改善で追うべき営業KPI
3プライス戦法を導入した後は、売上や成約率だけを見ていても改善状況を判断しきれません。
粗利率を上げるためには、少なくとも次の数字を継続的に確認することをおすすめします。
・商品別の提案件数
・商品別の成約件数
・商品別の販売比率
・商品別の粗利率
・営業担当者別の販売比率
・会社全体の平均粗利率
・値引き発生件数と値引き額
例えば、成約率が高くても低価格商品ばかり売れていれば、利益改善にはつながりません。
逆に、上位商品の販売比率だけを追いすぎて成約率が大きく落ちれば、それも最適とは言えません。
成約率・販売比率・粗利率の3つを同時に見ることで、自社に合った商品構成を調整しやすくなります。
12. 粗利率を上げた先は「会社にいくら残るか」まで見る
3プライス戦法で商品構成や販売比率を整えることは、粗利率を改善するうえで重要です。
ただし、経営という視点では、「見積もり上の粗利率が上がった」で終わりではありません。
実際に会社へ利益を残すためには、営業でつくった粗利が、完工後にも計画どおり残っているかを確認する必要があります。
例えば、次の数字はすべてつながっています。
成約率・平均単価・商品構成
↓
粗利率・粗利額
↓
販促費・人件費・固定費
↓
営業利益
↓
会社に残るキャッシュ
たとえば、営業段階では40%の粗利を見込んでいても、材料費・人工・外注費の増加や追加工事の請求漏れがあれば、実際の粗利は下がります。また、粗利額が増えても、販促費や固定費が膨らめば営業利益は残りません。
つまり、3プライス戦法は「利益を残す経営」の入口です。
営業では「どの商品を、どの比率で、どう売るか」を管理し、その先では案件別粗利・予実・営業利益・キャッシュまで確認する。この2つがつながることで、売上だけを追う経営から、利益が残る経営へ変えていきやすくなります。
13. まとめ|粗利率は「値上げ」ではなく営業設計で改善する
この記事のポイント
- 粗利率が下がる背景には、受注率を優先した値下げ営業がある
- 粗利率改善では、まず「何を売るか」を決める
- 商品ごとに粗利率と役割を変える
- 会社全体の粗利率を上げるには販売比率まで設計する
- 売りたい商品には、その商品を選ぶ理由が伝わる営業ストーリーが必要
- コスパは初期価格だけでなく、長期のメンテナンスコストで伝える
- 競合の商品・価格・提案内容も踏まえて自社仕様に調整する
- 成約率・販売比率・粗利率をセットで管理する
- 粗利率を改善した先は、営業利益・キャッシュまでつなげて確認する
粗利率を上げようとすると、「単価を上げる」「値引きを禁止する」といった施策に目が向きがちです。
しかし、それだけでは営業担当者もお客様も納得できません。
必要なのは、商品ラインナップ、商品別粗利率、販売比率、比較基準、営業ストーリーを一つの設計図として作ることです。
価格重視のお客様には選びやすい商品を残しながら、主力商品・上位商品を選ぶ価値も分かりやすく伝える。
その結果として会社全体の販売構成が変われば、無理な値上げや押し売りに頼らず、粗利率を改善できる可能性があります。
自社の商品構成や競合状況によって最適な設計は変わります。
「受注は取れているのに利益が残らない」「営業担当者によって売る商品がバラバラ」「価格競争から抜け出したい」という場合は、まず商品設計と営業プロセスを見直し、そのうえで粗利が最終的に営業利益・キャッシュとして会社に残っているかまで確認してみてください。
14. 塗装会社の粗利率改善・3プライス戦法に関するよくある質問
Q. 塗装会社の粗利率を上げるには、まず何から始めればいいですか?
A. まず「自社が何を主力商品として売るのか」を決めることです。そのうえで、商品ごとの粗利率、販売比率、提案ストーリーを設計します。単純に値上げするよりも、商品構成と営業の流れをセットで見直すことが重要です。
Q. 3プライス戦法とは、3種類の見積もりを出すだけですか?
A. 3種類を並べるだけではありません。入口商品・主力商品・上位商品など役割を分け、どの商品を何%売るのか、各商品でどれだけ粗利を確保するのかまで設計する考え方です。
Q. 高い商品を勧めると成約率が下がりませんか?
A. 高単価商品を一方的に勧めれば成約率が下がる可能性があります。そのため、お客様の希望を確認し、価格だけでなく耐久性や将来のメンテナンス回数など比較基準を示したうえで、お客様自身が選べる状態を作ることが重要です。
Q. コスパ重視のお客様には、安い塗料を勧めるべきですか?
A. 初期費用だけで判断するのではなく、将来の塗り替え回数を含めた長期のメンテナンスコストも比較材料として伝えます。今回の工事価格だけでなく、長期で見た総支出から判断してもらうことがポイントです。
Q. 動画内の「シリコン10年・フッ素20年・無機30年」は、そのまま営業で使えますか?
A. 動画内では営業ストーリーを説明するための概算例として紹介されています。実際の耐用年数は商品仕様、下地、施工条件、立地環境などで変わるため、自社で採用している塗料メーカーの仕様や施工基準に合わせて説明してください。
Q. 販売比率の50%・30%・20%は固定ですか?
A. 固定ではありません。動画では販売比率を事前に設計する考え方の例として示されています。自社の顧客層、商品構成、価格帯、競合状況、目標粗利率に合わせて調整する必要があります。
Q. 営業担当者によって売る商品が違う場合はどうすればいいですか?
A. 主力商品、商品ごとの役割、比較基準、営業ストーリーを共通化し、商品別の提案件数・成約件数・販売比率を営業担当者ごとに確認します。感覚ではなく数字で差を把握すると改善しやすくなります。
Q. 粗利率を上げれば、会社に利益は残りますか?
A. 粗利率の改善は重要ですが、それだけで会社に利益や現金が残るとは限りません。案件別の実粗利、材料費・人工・外注費、販促費、固定費、営業利益、入金までつなげて確認することが重要です。営業で粗利をつくる仕組みと、財務で利益を残す管理体制の両方を整える必要があります。