なぜ売上10億円を超えられない?塗装・建設会社が見直すべき4つの経営ポイント
【本コラムで分かること】
- 建設・塗装会社が年商10億円を目指すときにぶつかりやすい「10億円の壁」
- 10億円企業に必要な「高収益化・予実管理・施工管理・採用」の4つのポイント
- 売上だけでなく、受注金額・完工金額・受注粗利・完工粗利を見る理由
- 予実管理によって将来の資金と投資を見える化する方法
- 受注時には良かった粗利が、完工時に下がる原因と改善方法
- DXを導入するときに「高額なシステム」より先にやるべきこと
- 10億円企業に向けた採用で重要な「未来組織図」と人材への先行投資
「売上10億円」が見えてきたのに、なぜかお金が残らない――。
そんな状態になっていませんか?
「売上は伸びているのに、なぜか利益が残らない」
「受注時には良い粗利が出ていたはずなのに、完工すると粗利が下がっている」
「忙しくなっているのに、採用や設備投資に踏み切れない」
「今後どれくらいのお金が入ってくるのか分からず、先行投資が怖い」
塗装会社・リフォーム会社・土木会社・電気工事会社など、専門工事を行う会社が事業を拡大していくと、このような問題に直面することがあります。
年商10億円を目指すなら、売上を伸ばす「攻め」だけでは不十分です。受注が増えるほど、資金繰りや施工管理、人材不足といった「守り」の課題が大きくなります。
必要なのは、売上を増やす力だけではなく、増えた売上から利益を残し、次の投資につなげる仕組みです。
本記事では、専門工事業・建設業の経営者に向けて、年商10億円を目指すために押さえておきたい「予実管理」「施工管理」「DX」「採用」のポイントを解説します。
▼詳しく解説している動画はこちら▼
年商10億円を目指すための予実管理・施工管理・DX・採用について解説しています
1. 専門工事会社が年商10億円を目指すときにぶつかる「10億円の壁」とは?
年商10億円を目指す会社には、いくつか共通してぶつかるポイントがあります。
動画では、専門工事会社について「売上を作る力はあるものの、守備面が追いついていないケースが多い」と説明されています。
例えば、次のような状態です。
- 売上はあるが、粗利が十分に残っていない
- 受注時には粗利が確保できているが、完工時に粗利が下がっている
- 売上が増えることで資金繰りが厳しくなる
- 採用したいが、先行投資が怖くて採用できない
- 広告宣伝や設備投資に踏み切れない
つまり、10億円の壁は「どうやって売上を増やすか」だけの問題ではありません。
売上が増えたときに必要となる資金・人材・施工体制・利益管理を先回りして整えられるかが重要になります。

10億円の壁イメージ図
2. 10億円企業に必要な4つのピース
動画では、10億円企業を目指すために重要な要素として、次の4つが挙げられています。
- ビジネスモデルの高収益化
売上を作るだけではなく、利益を残せる事業構造を作る。 - 予実管理でお金を管理する
「どれくらい売上が入るのか」「どれくらい利益が出るのか」を予測し、先行投資の判断材料にする。 - 施工管理で守備を強化する
受注時の粗利と完工時の粗利を比較し、利益が減った原因を把握する。 - 採用によって組織をスケールさせる
将来必要になる組織を先に描き、必要な人材へ投資する。
この4つは独立したものではありません。
高収益化して利益を残し、予実管理によって将来のお金を見える化する。そして、施工管理によって利益を守り、利益が残るようになったら採用へ投資する。この流れが重要です。

10億円企業の4つのピース
3. 予実管理とは?10億円企業に必要な理由
10億円企業を目指すうえで、特に重要になるのが予実管理です。
予実管理とは、簡単に言えば「予算」と「実際の結果」を比較して、計画通りに進んでいるかを確認することです。
例えば、
- 毎月どれくらい売上を作るのか
- どれくらいの利益が必要なのか
- どれくらい工事を完工する必要があるのか
- どれくらいの受注が必要なのか
- 将来どれくらいのお金が入ってくるのか
こうした数字をあらかじめ計画しておき、実際の結果と比較します。
重要なのは、単に「今月いくら売れたか」を見ることではありません。
半年後、1年後にどれくらいの売上・利益・資金が見込めるのかを把握することが、予実管理の大きな目的です。

予実管理のPDCAフロー
4. 年商10億円なら月8,000万〜9,000万円の売上をどう作るか考える
動画では、年商10億円を目指す場合、単純に年間売上だけを見るのではなく、月ごとの売上や工事量まで分解して考える必要があると説明されています。
例えば年間10億円を目標にするなら、単純計算では月間約8,333万円です。
ただし、専門工事会社では毎月同じ工事量を完工できるとは限りません。
天候や季節によって施工量が変わるため、繁忙期・閑散期を考慮して計画を組む必要があります。
動画では、梅雨などで現場作業が止まりやすい時期には係数を0.9程度にし、その分を別の月で1.1倍にする、といった考え方が紹介されています。
重要なのは、毎月「8,000万円売る」と機械的に考えることではなく、自社の過去実績から季節変動を把握し、月ごとの完工可能額を予測することです。

月間売上計画の考え方
5. 予実管理で見るべき7つの数字
では、実際に何を管理すればよいのでしょうか。
動画では、20億円・30億円規模の会社で確認している数字として、次のような項目が紹介されています。
- 受注金額
- 完工金額
- 見込み顧客数
- 提出済み見積金額
- 見積からの決定率
- 3か月後・6か月後までの受注残
- 集客・広告などの投資額とリターン
さらに、前月・前々月・前年と比較し、自社の過去3年間の売上推移も確認することで、季節変動や異常値を把握しやすくなります。
特に重要なのが、「現在の売上」だけではなく「未来の売上がどれくらい見えているか」です。
見込み顧客、提出済み見積、受注残などを把握できれば、「3か月後にどれくらい受注できそうか」「半年後の工事量は足りているか」といった判断ができるようになります。
6. 予実管理ができると「先行投資の恐怖」が減る
予実管理の重要なメリットは、数字を管理することそのものではありません。
未来が見えることで、先行投資の判断がしやすくなることです。
例えば、
- 新しい社員を採用する
- 広告宣伝費を増やす
- 設備投資をする
- 新しい店舗を出す
こうした投資には、当然お金が必要です。
「投資したらお金がなくなるかもしれない」と感じるのは、将来どれくらいのお金が入ってくるのか分からないからです。
反対に、今後の受注・完工・入金がある程度予測できていれば、「このタイミングなら採用できる」「この金額なら広告投資できる」と判断しやすくなります。
動画では、予実管理の精度について、まず10〜20%以内のズレに抑え、最終的には5%以内を目指す考え方が示されています。
つまり、予実管理とは経理のためだけの数字管理ではなく、社長が未来への投資判断をするための仕組みです。
7. 受注粗利は良いのに、完工粗利が下がるのはなぜ?
10億円を目指す会社では、売上だけでなく受注時と完工時の粗利の差を確認することが重要です。
例えば、受注時には「この工事なら十分な粗利が取れる」と判断していたとしても、実際に工事を終えてみると利益が減っているケースがあります。
原因として考えられるのは、
- 想定していた原価より材料費が増えた
- 外注費が増えた
- 追加発注が発生した
- 現場でイレギュラーが発生した
- 追加工事を適切に請求できなかった
- 施工上の問題で手直しが発生した
ここで重要なのは、こうした問題を「イレギュラーだから仕方ない」と終わらせないことです。
同じ原因で粗利が下がっているのであれば、それはイレギュラーではなく、自社の業務フローに潜んでいる再発可能な問題かもしれません。

受注時粗利から完工粗利までの変化図
8. 施工管理では「粗利がどこで減ったか」を数字で見る
施工管理で重要なのは、現場を管理するだけではありません。
受注時に予定していた粗利と、完工時に実際に残った粗利を比較することが重要です。
例えば、受注時の予定粗利が20%だったとして、完工時に15%になっていたとします。
この5ポイントの差を「なんとなく利益が減った」で終わらせてはいけません。
「材料費なのか」「外注費なのか」「追加工事なのか」「施工ミスなのか」「見積もりの問題なのか」まで確認します。
原因が分かれば、
- 見積もりテンプレートを変更する
- 原価設定を見直す
- 発注ルールを変更する
- 施工マニュアルを改善する
- 追加工事の請求ルールを整える
といった改善につなげることができます。
逆に原因を分析しなければ、同じ失敗を翌年も繰り返す可能性があります。
受注→施工→完工粗利までを一つの流れとして見ることが、10億円企業の守備力を高めるポイントです。
9. DXは「高額なシステム導入」から始めなくていい
ここまでの予実管理や施工管理を効率化するために活用できるのがDXです。
ただし、動画ではDXについて「いきなり完璧なシステムを作る必要はない」という考え方が示されています。
例えば、最初はExcelでも構いません。
まずは、
- 案件名
- 受注金額
- 受注時の粗利
- 完工金額
- 完工時の粗利
- 原価
など、本当に必要な項目だけを入力できるようにします。
そして社員が入力できる状態を作り、入力が定着した後で、必要に応じてDXツールへ移行していきます。
重要なのは、「何のシステムを導入するか」ではなく、「必要なデータが毎回入力されるか」です。

DX導入の段階イメージ図
10. DXが失敗する最大の原因は「完璧を求めすぎること」
DXがうまく進まない会社では、「このデータも欲しい」「あの数字も欲しい」と管理項目を増やしてしまうことがあります。
しかし、入力する社員からすると、入力項目が多くなるほど負担が増えます。
結果として、入力されなくなり、せっかく導入したシステムが使われなくなる可能性があります。
そこで重要になるのが、最初から完璧を目指さないことです。
まずは、受注金額・完工金額・原価など、経営判断に必要な最低限の数字を確実に入力する。
そのデータをもとに分析する仕事は、経営者や経理など別の担当者が行えばよい、という考え方です。
「高い山にいきなり登ることはできない」という動画内の説明のように、DXも段階的に進めることが重要です。
11. 10億円企業の採用は「未来組織図」から始める
予実管理や施工管理によって利益が残るようになってきたら、次に必要になるのが人への投資です。
動画では、採用の最初のステップとして「未来組織像を描くこと」が紹介されています。
例えば、
- 将来の事業責任者
- 店長
- リーダー
- サブリーダー
- 若手・未経験社員
など、会社が大きくなったときに必要になる役職・人材を先に考えます。
この「未来組織図」がない状態で採用をすると、「とりあえず人が足りないから採用する」という採用になりがちです。
一方、未来の組織を描いておけば、今採用すべき人材と、将来的に育成する人材を分けて考えることができます。

未来組織図のサンプル
12. リーダー人材と未経験人材を組み合わせる「ハイブリッド採用」
動画では、10億円規模を目指す会社では、未経験者だけを採用するのではなく、経験のあるリーダークラスと未経験・若手人材を組み合わせる「ハイブリッド」の考え方が紹介されています。
例えば、リーダー・事業責任者クラスを採用し、その下に第二新卒や30歳前後の未経験人材を配置して育成していく方法です。
リーダークラスの採用には一定の費用がかかります。
動画では、リーダークラスの採用費として150万〜200万円程度、新卒採用では1人あたり50万〜100万円程度という金額が紹介されています。
もちろん採用費は会社や採用方法によって変わりますが、重要なのは「採用費をコストだけで考えない」ということです。
その人材が将来的に大きな売上・利益を生み出すのであれば、採用費は組織を成長させるための投資として考える必要があります。
13. 新卒採用では「母集団形成」が重要
新卒採用については、動画ではどれだけ母集団を形成できるかがポイントとして説明されています。
具体的には、
- 合同企業説明会
- インターンシップ
- その他の採用イベント
などを活用して、まず学生との接点を増やしていきます。
ここでも重要なのは、採用活動を「人が足りなくなってから始める」のではなく、会社が成長するために必要な人材を逆算して、早い段階から投資することです。
そのためにも、先ほど説明した予実管理によって、採用にどれくらい投資できるのかを事前に把握しておくことが重要になります。
14. 年商10億円を目指す会社が毎月確認したい経営数字
ここまでの内容を踏まえると、10億円を目指す会社では、単純な売上だけでなく、営業・施工・利益・採用につながる数字を一連の流れとして確認することが重要です。
【予実管理】
- 受注金額
- 完工金額
- 見込み案件数
- 見積提出金額
- 決定率
- 3か月後・6か月後の受注残
【施工管理】
- 受注粗利
- 完工粗利
- 原価
- 追加発注
- 手直し
- 粗利が下がった原因
【採用・組織】
- 現在の人員
- 将来必要なポジション
- 採用予定人数
- 採用投資額
このように数字をつなげて確認することで、「売上が足りない」のか、「受注が足りない」のか、「施工で利益を落としている」のか、「人が足りない」のかを判断しやすくなります。

経営数字の一本の流れイメージ図
15. 年商10億円を目指すための実践チェックリスト
最後に、現在の会社の状態を確認してみましょう。
- 年間売上目標を月ごとの数字まで分解している
- 月ごとの完工可能額を把握している
- 受注金額を毎月確認している
- 見込み顧客・提出済み見積を把握している
- 3か月後・6か月後の受注残を把握している
- 受注粗利と完工粗利を比較している
- 粗利が下がった原因を分類している
- 社員が最低限必要な数字を入力する仕組みがある
- Excelなど簡単な方法からDXを始めている
- 将来必要になる「未来組織図」を描いている
- リーダー人材と若手・未経験人材の採用計画がある
- 採用を「コスト」ではなく「成長への投資」として計画している
チェックが少ない場合、いきなり大規模なシステム導入や大量採用を行うのではなく、まずは「今後どれくらい売上・利益・資金が見込めるのか」を数字にすることから始めることをおすすめします。
16. まとめ|10億円企業に必要なのは「売上」だけではなく「守備力」
専門工事会社が年商10億円を目指すとき、重要なのは売上を増やすことだけではありません。
今回の動画で紹介されたポイントをまとめると、次の4つです。
- ビジネスモデルを高収益化する
売上だけでなく、利益を残せる事業構造を作る。 - 予実管理で未来のお金を見える化する
受注・完工・見積・受注残などから、将来の売上と資金を予測する。 - 施工管理で粗利を守る
受注粗利と完工粗利を比較し、利益が減った原因を改善する。 - 採用によって組織をスケールさせる
未来組織図を描き、リーダー人材と若手・未経験人材へ計画的に投資する。
そして、その土台となるのがDXです。
ただし、DXの目的は高額なシステムを導入することではありません。
必要な数字を入力し、見える化し、その数字をもとに経営判断と改善を繰り返せる会社にすること。
これが10億円企業を目指すための「守備力」につながります。
17. よくある質問(FAQ)
Q. 年商10億円を目指すなら、まず何から始めればいいですか?
A. まずは現在の受注金額・完工金額・見込み案件・提出済み見積・受注残などを整理し、将来どれくらいの売上が見込めるのかを把握することから始めるのがおすすめです。
Q. 予実管理は経理に任せればいいですか?
A. 動画では、予実管理は単なる経理業務ではなく、社長が将来への投資判断をするためのものと説明されています。経理だけに任せるのではなく、経営者自身が数字を確認することが重要です。
Q. 予実管理では何を見ればいいですか?
A. 受注金額・完工金額に加えて、見込み顧客数、提出済み見積金額、決定率、3か月後・6か月後の受注残、集客や広告への投資額などを確認する方法があります。
Q. 受注粗利と完工粗利が違うのはなぜですか?
A. 材料費・外注費などの原価増加、追加発注、追加工事の未請求、施工上の問題による手直しなど、さまざまな原因が考えられます。重要なのは、粗利が下がった原因を特定し、同じ問題を繰り返さないことです。
Q. DXのために高額なシステムを導入する必要がありますか?
A. 必ずしも必要ではありません。動画では、まずExcelなどで必要な項目を入力・管理し、入力を定着させることから始める考え方が紹介されています。
Q. DXが社員に定着しません。どうすればいいですか?
A. 最初から多くの情報を入力させず、本当に必要な項目に絞ることが重要です。まず社員が入力できる仕組みを作り、運用が定着してから段階的にDX化を進めます。
Q. 10億円企業を目指す採用では何が重要ですか?
A. まず将来どのような組織にしたいのか「未来組織像」を描くことが重要です。そのうえで、リーダー・事業責任者などの経験者と、若手・未経験人材を組み合わせた採用を検討します。
Q. 採用費が高くて投資できません。
A. 採用費を単純なコストとして見るのではなく、将来の売上・組織づくりにつながる投資として考える視点が重要です。ただし、採用可能な金額を判断するためにも、まず予実管理によって将来の資金を見える化することが重要です。